今日は久しぶりに私のした仕事シリーズということで、母子保健担当係長の時のことを1つ。
ダイオキシン問題では国の研究班が安全と言っているというと怪しげな婦人会に信用ならないと言われ、
なるべく元の論文等を自分で調べて反論し、徹底的に不安を煽る連中とは戦っていましたが、
神経芽細胞腫の問題は業務命令もあり怪しい思いながら国の御用学者の報告書を使ってしまいました。
神経芽細胞腫は乳幼児のがん(正確には悪性の肉腫)で、6か月くらいに尿を取って調べ、
神経から出る物質が多いと精密検査になり、多くの子どもが(多分2~3千人に1人位)見つかってました。
保健所の4か月健診でキットを渡すので、保健師さんは熱心に勧めていました、
そして早く見つかってよかったね、助かったねと喜んでいました。実は、全くそうではなかったのです。
がんもどきでした。病理学的には間違いなく悪性、でも放置しても大丈夫という例が多く報告されてきました。
小さいものはたいてい進行せずに石灰化して石のようになり自然治癒する、手術するほうが危ないと。
有名ながんの疫学のO先生が、直ちに中止すべきと論文を添えて府の検討会で言ってくれと、
ただ行政としては困ってしまいます、有効だとして進めているのですから、ただおそらく中止が妥当。
厚生労働省の研究班も多くの指摘を受けて重い腰を上げましたが、ケースコントロールスタディという
あまり正しくない研究で一応有効であると、O先生はお怒りでした、あんなめちゃめちゃな研究はないと。
府立の病院に高い金で検査委託していますので、病院赤字の解消にもなり検査技師の職員も確保でき、
国からの補助金もあるし行政にとっては実にありがたい事業でした。とにかく検診は金が絡む。
何よりこれまでに手術されてお腹を切られた方から無駄な治療をされたと言われる恐れもあり、
逆に進行する例もある、この手の事業の中止には勇気が入ります、自治体独自ではとてもできる話でない。
ひたすら御用学者の報告書で有効ですから続けますと言っていましたら、当学者が研究費の不正で逮捕、
結局国は一時中止し、6か月だと早すぎで一部希望する自治体でもう少し遅い時期で研究するという対応。
その時には異動した後でしたが、担当者は大変だったと思います。
振り返って前立腺がんもそういった議論で、疫学者と泌尿器科医がバトル中です、
がんがたくさん見つかるのは確かですが、がんもどきも多く、結局死亡率の減少はほとんどゼロかわずか、
費用対効果や本人の苦しみからすると推奨するのはいかがなものかと思います。
ちなみに、甲状腺もがんもどきが多い代表格、剖検では2割から3割も病理的にがんが見つかります。
チェルノブイリでも多分そうなのでしょうが、これから福島も甲状腺がんが増えますよ、検診をやりますから。
井戸まさとし
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